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コロナ禍の生活と糖尿病

西尾 真也 医師

メディカルプラザ江戸川 糖尿病・代謝・腎臓内科

江戸川区の新型コロナウイルス感染症

2021年5月14日時点
累計感染者数 6518名 江戸川区人口 70万人 
⇨ 感染者の割合は、1000人あたり約9人

Q 江戸川区は感染者数が多くて心配なんですが・・・

A 江戸川区は人口も多いため、割合からみると決して多くはありません。
ちなみに人口の割に感染者数が多いのは新宿区、港区、渋谷区です。

地域の糖尿病診療への影響

 メディカルプラザ江戸川での調査(第1回緊急事態宣言期間)

・初診患者数 33% ↓↓ 
・再診患者数 16% ↓

 区東部36医療機関へのアンケート調査(2020年10〜11月)

・約1/4の医療機関が、糖尿病患者数が減少したと回答
・約4割の医療機関が、合併症(三大合併症や動脈硬化症)のチェックが減少したと回答

合併症の発見の遅れに注意!!

糖尿病患者がコロナにかかると、危険?

報告によって結果にばらつきがあるが、世界的な調査の結果、
糖尿病のある人は、糖尿病のない人に比べて
死亡リスク 2倍
重症化リスク 4倍

に高まることが明らかになっている。

糖尿病以外の重症化の原因(危険因子)

  • 65才以上
  • 慢性腎臓病
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 高血圧
  • 心臓病(心血管疾患)
  • BMI 30以上 (例 身長150cmの方であれば68kg以上)

などが挙げられる。

糖尿病患者はコロナに罹りやすい?

中国やアメリカでの調査において、コロナ感染患者の約11%が糖尿病を有していた。
この数字はそれぞれの国の糖尿病患者の割合と同等であったことから、糖尿病だからコロナに感染しやすいということはない
と一般的には考えられている。

コロナ感染と血糖コントロールの関係

≫中国武漢における調査で、コロナ感染中の血糖コントロールが180mg/dl以下の患者と、180mg/dlを超える患者では、生存率に違いが確認された。

≫同様に中国の調査では、血糖コントロール不良群(平均HbA1c 8.1%)で血糖コントロール良好群に比べて、死亡率が上昇した。

いざと言うときに備えて、日頃の血糖コントロールを良くしておくことが重要かもしれません。

コロナ感染と血糖コントロールの関係

≫糖尿病患者がコロナに感染すると、感染によるストレスや、膵臓への悪影響により、血糖コントロールが悪化する。

重症度が中等度以上のコロナの治療で推奨されるステロイド治療は、副作用として血糖を悪化させることから、血糖コントロールが悪い例においては、ステロイドの使用が差し控えられる可能性がある。

いざと言うときにコロナの治療がしっかり治療ができるように、普段の血糖コントロールの改善を目指しましょう。

コロナ禍が生活習慣と血糖に及ぼす影響

 イタリアにおける調査 ステイホーム期間中

・ジャンクフードの摂取が増え、約5割で体重が増加した
・約7割で身体活動量が減った

 京都府立医科大学の調査 第1回緊急事態宣言による生活の変化

・ストレスが増えた 41%   
・運動量が減った 53%
・外食が減った 50%  
・中食(惣菜を買って家で食べる)が増えた 40%

コロナ禍の影響:当院における調査

第1回緊急事態宣言による血液検査数値の変化
※ 2020年2月から5月における変化

・体重の増加傾向 (例年は2月から5月にかけて体重が減少傾向)
・HbA1cは例年は低下する時期であるが、逆に平均0.1%の増加
・血圧も例年は低下する時期であるが、低下しなかった
・悪玉コレステロール(LDL-C, nonHDL-C)は増加、善玉(HDL-C)は低下

緊急事態宣言の発令されたことにより、2020年2月から5月にかけて、体重、HbA1c、血圧、脂質系はいずれも悪化傾向を示した。

実際の経験例:血糖が悪化した患者さん

50代女性

在宅勤務になった結果、ついつい間食をしてしまい、体重が増え血糖が悪化してしまった。

40代男性

在宅勤務になり、遠方への通勤がなくなり、運動量が減ってしまいました。

70代女性

以前は江戸川の土手で毎日散歩していましたが、コロナの流行で逆に人が増えたので、心配になって散歩をやめてしまいました。

実際の経験例:血糖が改善した患者さん

50代男性

夜はいつも友人と外食をしていましたが、緊急事態宣言がきっかけで自宅で食べるようになりました。体重が3kg減って、HbA1cが1%以上改善しました。

60代女性

糖尿病患者は重症になりやすいと聞いて、危機感を感じるようになり、毎日1時間散歩をするようになりました。

70代女性

趣味仲間で集まる機会がなくなり、運動不足と体力の衰えを自覚したので、空いた時間を活かし、毎日3000歩を目標に散歩を始めるようになりました。

コロナ禍の「食事」に関する注意点

・ステイホームで間食が増えるため、間食はなるべく買い込まないように注意
・集団での会食は感染リスクが高いため、外食を減らす良い機会と捉えよう
・中食・テイクアウトはジャンクフードではなく、バランスの良いものを
・時間の余裕がある方は、ゆっくり時間をかけて食べるように心がける
・これを機に自炊にチャレンジ、薄味で素材の味を楽しみましょう

コロナ禍の「運動」に関する注意点

・運動不足は筋肉量の低下、不眠、ストレスの増加により血糖の悪化の原因となる
・これだけでなく、認知症発症や要介護リスク、発がんリスクの増加にも関わる
・密を避けられて、血糖改善効果も高いとされる夕食後の散歩がおススメ
・自宅でできる運動を実践。下半身の筋肉は全身の70%を占め、下肢の運動が有効
例)かかと上げ運動、ハーフスクワットなど

具体的な運動の方法については、日本糖尿病協会のホームページで公開されていますので、ご参照ください
( https://www.nittokyo.or.jp/modules/patient/index.php?content_id=89 )

コロナ禍の「感染対策」に関する注意点

・まずは3密を避け、人との距離は1〜2mとるように心がけましょう
・換気は1時間に2回、可能なら常時換気するようにしましょう
・マスクの種類によって、感染予防効果が違います

感染予防効果は
不織布マスク > 布マスク > ウレタンマスク
できれば不織布マスクを使用することをおススメします。

コロナ禍の「感染対策」に関する注意点

・アルコール消毒は濃度70%以上のものを使用
注)店頭で置かれている手指消毒は低濃度のものも多い上、それを触ること自体がウイルス接触の原因となり得るため注意
⇨ 「手のひらでなく、腕でプッシュ」

・環境表面に一定時間(数日程度と言われている) ウイルスが残ることに注意 
⇨ 予防を徹底したい方は、消毒用のアルコールペーパーの使用を

「マイクロ飛沫(エアロゾル)」に注意

・ウイルスを含んだ小さな粒子が、しばらく空気中を漂い、少し離れた距離にまで感染が広がる
・20分〜数時間もの時間、空気中に滞留すると言われている
・インフルエンザウイルスとは異なり、咳・くしゃみだけではなく、会話や歌唱によって飛散しやすいことが特徴

・会話時のマスク着用
・換気(頻回もしくは常時)
コロナの感染予防においては特に重要です。

さいごに

新型コロナウイルス感染症は、われわれの生活を大きく変えてしまいました。
いち早い収束と安心できる日常の復帰を望みます。
一方で、コロナ禍は生活習慣を変える又とないチャンスと捉えることもできます。
実際に、これを機に生活習慣を改善させた患者さんを多く経験しています。
ぜひ我々とともに糖尿病治療の新たな日常について考えていきましょう。

” 禍を転じて福となす ”

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